退職トラブルを避けるための心得
RYZEでは多くの方々の転職活動をサポートする中で、退職というステップでトラブルを抱える方をたくさん見てきました。例えば、退職交渉をこじらせ会社との関係が悪くなったり、上司の引き留めにうまく対処できずに転職を諦めるなど。実際、一旦退職を会社に伝えたものの退職を諦めた人の9割は一年以内に転職しているのが実情です。
そういった退職トラブルを避けるにはどのような方法を取れば良いのでしょうか。転職活動の中でも特に退職は、多くの人にとって心理的にストレスが大きい部分です。しかし事前の知識と準備があれば何も恐れる必要はありません。
この記事の内容
STEP1 ・退職届を提出する前準備
STEP2・会社が社員の退職を引き留める理由
STEP3・引き留めとその対処法
STEP4・退職しなかった場合のリスク
STEP5・<最終手段>それでも退職受理されない時
STEP1
退職届を提出する前準備
①余裕を持って退職日を決める
②退職届を提出し、記録を残す
③退職届の提出は、金曜日がお勧め
④退職の意思は固くし、会社へ交渉の余地を与えない
⑤職転理由は現職で実現できないポジティブな理由
⑥こっそり退職の準備を始めておく
⑦会社を辞めることに罪悪感を感じる必要はない
①余裕を持って退職日を決める
退職日については、法律上は退職届を提出してから2週間が経てば退職可能です。とはいえ現実的には2週間で引き継ぎは困難ですので、一般的には引き継ぎと有休消化の期間などを含め、1~2ヶ月ほどで退職する人が多いです。会社の就労規則で「1ヶ月前」「2ヶ月前」と規定されていることもあるので、円満退社をしたければ申告期間を事前にチェックしましょう。転職先がすでに決まっており、次の会社からの入社日の要望がある場合には、現職と転職先で問題のない退職日を決めておきましょう。
②退職届を提出し、記録を残す
そもそも退職願と退職届、どちらを提出すれば良いのでしょうか?
・退職願は会社側に合意を求める願書なので、会社から承諾の意思表示があるまでは原則として撤回が可能です。
・退職届は労働者からの退職の通告であり、一度提出すると原則として撤回できません。
また退職を伝えるのが口頭だと証拠が残らないため、文書もしくはメールで退職届を提出しましょう。
ちなみにヘッドハンティングされた場合、まだ転職先と雇用契約を結んでない状態で退職届を提出する人が稀にいらっしゃいます。ヘッドハンティングでの面接でも必ずしも内定が出るとは限らないので、必ず次の雇用契約を結んでから退職届を出すようにしましょう。
ちなみに、会社に退職願を提出し、会社から承諾されないと退職できないと思ってる方がいらっしゃいますが、本来は退職は被雇用者の権利であり、会社からの承認は必要ではありません。そのため退職願ではなく、退職届に提出日と退職日を記入して提出すれば、法律上は問題ありません。
労働者からの退職については民法によって定められています。期間の定めがない労働者(つまり正社員)からの退職は、「退職の自由」にもとづき、事前の意思表示さえあれば時期に関係なく認められるのが原則です。さらにその意思表示から2週間が経つと、例え使用者が認めていなくても、民法627条1項の規定に基づき労働契約は終了します。つまり、退職の権利は労働者側にあるので、会社が承諾しようとしなかろうと、退職届の提出後2週間以上経過すれば退職することに法律上の問題はないということです。
③退職届の提出は、金曜日がお勧め
基本的に退職届の提出に良い日は、木曜日または金曜日の午前中かランチ後です。
もし月曜日に退職届を提出すると、その週を通して複数のミーティングを求められる場合もあり、退職に対して多大なストレスとなる可能性が高いからです。もし一週間のうちに何度も引き留めのミーティングをされることになれば、ストレスであなたの退職への決意が揺らいでしまうかもしれません。しかしそれこそが、会社側の狙いです。
木曜か金曜の退職届の提出であれば週末の時間を挟むことで、上司も部下の退職について心理的に受け止めやすくなります。特に金曜をお勧めしますが、金曜は週末に向けておそらく上司の気持ちも少しアップしているであろうという理由もあります。また時間帯については業務で疲れた夕方よりも午前中やランチ後の方が誰でも気力・体力があるので、双方にとって退職というストレスを処理しやすいからです。よって退職届の提出の好ましくないタイミングとしては、月曜か火曜の夕方ということになります。
④退職の意思は固くし、会社へ交渉の余地を与えない
上司へ相談する形で話し合いの場を設けたり、退職届ではなく退職願を提出すると、会社からあなたへの退職交渉の余地があるような印象を持たれてしまいます。なぜ退職したいのかと聞かれた流れでうっかり会社や現職への不満を漏らしてしまい、それがあなたの退職の引き留めの材料になってしまうことがほとんどです。退職への固い意思表示し、交渉の余地を見せないことが会社からの引き留めを避けるために重要です。退職届を提出する際に、退職の意思と退職日等の要点を伝える下記の様な内容をお伝えしてはいかがでしょうか。
例:
転職(次の転職先が決まってない場合は退職)を決意しました。〇月〇日を退職日とさせて頂きます。今までここで仕事をする機会を頂いたことに心から感謝しております。多くのご指導を頂きありがとうございました。退職日まで、業務に支障が出ないよう責任を持って仕事の引き継ぎを全力でいたします。
⑤転職理由は現職で実現できないポジティブな理由にする
転職理由の条件1: 現職で実現できないこと
現職以外の場所で新たな挑戦をしたいと伝えるのがベターです。それは今までの経験を活かしたものでも良いですし、全く新たなチャレンジでも構いません。要は退職理由が、それが現在の会社ではどうしても実現できないので退職せざるを得ないという理由であることが大切です。なぜなら給与の問題など現在の会社でも実現可能な条件であれば、引き留めの材料になりうるからです。またどうしても前向きな退職理由がない場合には家庭もしくは家族の事情(例えば介護・育児・家族の健康上の理由等)などと伝えれば、会社もあまり突っ込んで聞きにくくなるでしょう。
転職理由の条件2: ポジティブな理由
転職理由は、前向きでポジティブな理由にしましょう。なぜなら会社への不満を伝えることは上司や同僚への心象も悪くなりますし、退職までの期間に嫌がらせなどを受けるケースもあるからです。もし退職理由として現職への不満を漏らすと、会社はあなたを引き留めるために昇給や昇進、職場の問題の改善などを提案するでしょう。つまりネガティブな退職理由を話した場合、現職の不満への対処はするから、そうするとあなたが退社する理由は無くなるよね、という流れになってしまうのです。会社への不満を漏らすことは、会社に対して引き留めの理由を自ら提供してしまうことになるのです。とはいえ会社から解決策が提案されたとしても、それが本当に実現される保証はありません。多くの場合、引き留めで提案された条件は口約束で終わってしまうケースも多いのが実情です。
⑥こっそり退職の準備を始めておく
退職の決断をしたら、引き継ぎの準備を始めたり職場の私物を家に持ち帰るなど、実際に退職の準備を始めてみることをお勧めします。小さな行動ですが未来に向けて行動を起こすことで「自分はもうすぐ本当に退職する」という実感が湧き、心の準備ができます。退職の決断に迷いが残る状態で申し出をすると、上司に引き留めの余地があると見抜かれ、あの手この手であなたを引き止めるための手段を講じる可能性が高くなります。退職届を提出する際は、退職への決断を固め毅然とした態度で上司に退職届を提出すると良いでしょう。
⑦会社を辞めることに罪悪感を感じる必要はない
退職は転職においてストレスの多いステップであり、会社を辞めることに罪悪感を感じるのは多くの人が経験します。
罪悪感を持つことは自然なことだと理解することが大切です。罪悪感を感じるのは、仕事や職場に強い責任感やコミットメントや忠誠心、そして物事に対する慎重な姿勢があるからです。だからこそあなたはビジネスパーソンとして価値がある存在なのです。しかし、このことがあなたの人生の選択の幅を狭めないようにしましょう。環境を変えて新たな物事に挑戦することは、人生で最も成長できるチャンスなのですから。
会社は社員の誰が退職しても前進していきますし、あなたを引き留めようとする上司や同僚も新しい機会を求めていつ去っていくかは分かりません。結局、組織も人も最終的には自己利益を優先せざるを得ないからです。なのであなたも自分自身のためにベストを尽くしましょう。キャリアの選択は、最終的には自分の人生にとって何がベストかの選択であり、決して会社や同僚への裏切りではありません。現在の職場の人との関係を大切に思えることは自然なことですし、退職後も友人として繋がりが続く人もいるかも知れません。しかし実際には退職後は現在の職場の人のほとんどが、ただの「以前の職場の人」になります。会社というコミュニティを出ることに対する罪悪感を感じているのは自分自身であり、客観的に何か悪いことをしている訳ではないということを認識しましょう。
逆に友人の新たな挑戦に対して前向きに応援できない人を、真の友人と呼べるのかということを考えみましょう。同僚の転職に対してネガティブな反応をするなら、その人たちは退職後には真の友人にはならないだろうということです。本当の友人なら、仲間の挑戦に対して「おめでとう。あなたなら次の職場でも活躍できると思うよ。」と応援のエールを送ってくれるはずです。
STEP2
会社が社員を退職を引き留める理由
もし会社が快くあなたの退職を受け入れてくれたのなら、あなたはラッキーです。しかし退職届を提出しても、多くの場合引き留めに合うことを覚悟しておきましょう。それが普通なんです。ではなぜ会社は退職したい社員を必死で引き止めようとするか?それには単に人手が減り現場の負担が増える以外にも理由があります。
①会社は次の後任を探す負担を避けたい
後任が必要なポジションの場合、いつ後任が見つけられるかもわかりませんし、後任が見つかったとしても引き継ぎ後に後任があなたと同じかそれ以上の仕事ができるという保証はありません。あなたの退職に伴い新たに中途採用が必要な場合、採用募集の広告費や面接の時間、引き継ぎやトレーニングなど会社には多大な人的・経済的・時間的なコストがかかるので、それを避けるために会社はなるべく人を引き留めたいのです。
②部下が辞めると上司の評価が下がる
会社としては同じ人に長期で働いてもらう方が費用対効果が良いので、部下が頻繁に辞めるようなマネージャーの評価を下げます。それゆえ部下に辞められると上司は自分の評価が下がるので大変困るのです。つまり部下を快く送り出すよりも、とにかくあの手この手で引き留めることが上司にとって得策なのです。
STEP3
引き留めとその対処法
では実際に会社はどうやって退職する人を引き留めるのでしょうか?それぞれの例と対処法について解説します。
①魅力的な提案(カウンターオファー)で退職を断念させる
②罪悪感や不安を煽る心理操作
③退職日を延期させられる
④退職を受理しない理
⑤競合には転職にできないと脅される
⑥同僚から嫉妬の対象になる
①魅力的な提案(カウンターオファー)で退職を断念させる
退職の申し入れ後、上司や上層部があなたが退職しないように魅力的な条件の提案、つまりカウンターオーファーを出して引き止めようとします。
例えば
・待遇面の不満については、昇格や昇給を約束
・人間関係や仕事内容に関しての不満には、部署の改善や部署異動を提案 など
そもそも、退職の話が出て初めて待遇改善の話をされるということは、それまで正当に評価されていなかったことの証しとも考えられます。あなたが転職せずにその会社に残ったとしても、提案された条件は実現せずにいつしか立ち消えになってしまう可能性が高いかも知れません。なぜなら実際、そういう方が非常に多いからです。その理由については、また後ほど詳しく説明いたします。
対策:会社からの提案はほぼ実現しないものと想定してスルーする。
②罪悪感や不安を煽る心理操作
【良心に訴える方法】「辞められると困る」「君がいないと仕事が回らない」「将来の幹部候補だ」
【罪悪感に訴える方法】「君は仲間を裏切るのか」「会社を裏切るのか」「恩を忘れたのか」「後任がいないから辞めないでくれ」
【不安を煽る方法】「転職先は悪い噂がある」「転職してもうまくいかない」「転職はあと一年頑張ってからでも遅くはない」
これは単にあなたを引き留めるための心理的な駆け引きに過ぎません。
上司はあなたの人生の責任は取れますか?あなたの人生の責任はあなたしか取れません。あなたに人生にとってベストな選択をしましょう。
対策:何を言われても、ただ上司は自分の保身のために猛烈に必死なんだな~と仏の心でスルーしましょう。
③退職日を延期させられる
「現在のプロジェクトが終わるまで」
「後任が見つかるまで」「引き継ぎを終わらせるまで退職できない」
「とりあえず半年は入れくないと困る」
など何らかの理由で退職日を延期しようとする方法です。
一般的には退職までの期間は1ヶ月程の会社が多く、会社によってはそれ以上の期間を就業規則に記載している場合もあります。退職の延期は引き留めるための一見まともな理由に見えますが、法律的には正社員の退職届が受理されてから2週間で退職できます。就業規則よりも法律の方が効力が強いので、会社が社員の退職を妨害したり延期を強制する力は法律上ありません。
対策:事前にできるだけ引き継ぎの準備をしておきましょう。そうすれば引き留めにあった際に「準備はできているので、この日数があれば引き継ぎができます」と言えるので、退職を先延ばしにされる理由がなくなります。
④退職が受理されない
大きな組織の場合、退職の申し入れに対して上司だけでは決裁権がなく上層部や人事などの承諾が必要になる場合があります。実際に手続きのために時間がかかってしまう場合もありますが、上司がわざと報告をしなかったり、退職のプロセスを引き延ばしたり、手続きの途中でどこで受理されていないのかをうやむやにしてしまうケースもあります。退職手続きが社内で保留となってしまい、どこで保留になってるか確認してもたらい回しになり、いつまでも退職できないというケースもあります。
対策:いつまでに誰が処理をするのかを責任者と期日の記録をとり、責任の所在を明確にして手続きが滞らないようにあなたが退職受理の進捗を管理する必要があります。
⑤競合には転職にできないと脅される
引き留め対策としてよく使われる文言ですが、法律的に競合への転職は問題はないので、事実ではありません。
競合に転職すると会社に伝えると、法的手段を取ると脅されたり、嫌がらせを受ける場合もあります。
しかしそれは会社はあなたを失いたくないのと同時にあなたのような経験者が競合で働けばその企業の助けになるので、退職者を出す会社にとってはダブルで痛手となるからです。また、競合へ転職する可能性のある他の社員への見せしめという意味もあります。しかし競合への転職自体は違法ではないので、一種の引き留めのパフォーマンスとして慌てないようにしましょう。実際、多くの企業の経営幹部層が競合他社に転職しています。実際にはそれが正当なキャリアップの手段だからです。今まで業界で培った経験や知見を買われるからこそ、より良い条件の転職ができるのは当然なのです。
一方で競合他社に転職した人が会社の情報を盗んだと前の会社から訴えらえるケースもしばしばあります。競合に転職すること自体は違法ではなくても、退職者の行動に秘密漏洩など法的に不備な点があれば訴訟となる可能性がありますので、そうならないように注意してください。転職先を聞かれたら「すいません、次の会社から転職のことは内密にと言われておりますので、転職後にお知らせいたします。」と余裕の笑顔で答えましょう。
対策:転職先は上司に知らせない方が無難です。
⑥ 同僚から嫉妬の対象になる
上司だけでなく同僚にも会社に在籍中は次の転職先を知らせない方が無難です。
なぜなら同僚の転職は職場で嫉妬やゴシップの対象になりやすく、同僚から想定外の反応をされ、あなたの退職への気持ちが揺らぐ原因になる可能性があるからです。同僚の中には転職したくてもできない人もいるかも知れません。退職するまでの期間に、同僚から「あの会社(業界)は〇〇が良くないらしい」「そういう転職って本当に大丈夫なの」など親切か嫉妬によるものかわからない余計なアドバイスや感想を聞き、退職や転職への不安を感じてしまう原因になるかも知れません。また転職先を知った同僚から上司に伝わり引き留めや嫌がらせに合う可能性など、退職までの期間に様々なトラブルの種となる可能性もあります。他人の反応はコントロールできないからです。
対策:とにかく転職先は、社内の誰にも知らせない。
STEP4
退職しない場合のリスク
退職を諦めた場合、その後は今までと同じように現職で働けると考えていると考えてる方が多いと思います。しかし、退職を撤回した人の9割程の人が一年以内に転職しているのが現状です。なぜ、そのようなことになるのでしょうか。それは多くの職場で、退職撤回後の理想と現実のキャップが生じるからです。
①引き留めの条件であった、昇給や部署異動などが実現されない
②昇給や昇進で会社からのプレッシャーが増大する
③「いつ辞めるかわからない人」と見なされ昇進できなくなる
④引き留めていた上司が会社をやめてしまう
⑤会社が買収されるなどで職場環境が変化
⑥一旦内定を断った会社には応募できない
①引き留めの条件であった、昇給や部署異動などが実現されない
そんなバカなと思われるかもしれませんが、残念ながら実はよく聞く話です。
上司があなたを引き留める時に良い条件を出したとしても、あなたが転職しないことが確定した後、昇給などの条件が立ち消えになってしまうことが多々あります。なぜかというと、上司との引き留めの約束が書面での契約ではなく、ただの口約束であることが多いからです。また昇給となると、他の社員や部署とのバランスの考慮や人事などの社内調整が必要となり、実際には引き留めた社員だけを特別扱いするのが社内事情的に難しい場合もあります。引き留めの時は必死だったものの、上司が思っていたよりも提案した条件の実現が様々な事情により困難なケースが多いのかも知れません。
②昇給や昇進で会社からのプレッシャーが増大する
昇給や昇進などの引き留めの条件が実現した場合は、「条件交渉して良かった!」となりますが、それは一時的なものであるケースが多いです。
なぜかというと昇給や昇進により会社からの期待値も上がり、仕事の責任やKPIといったノルマやプレッシャーが増え、それに適応できずに転職する人が多いからです。上司や会社の立場からすると「昇給した分は仕事と責任を増やして当然、その分もっと働いてくれるでしょ」ということでしょう。なので昇給や昇進が会社に残る条件の場合、以前とは同じ様には働けない可能性が大きいことを肝に銘じておいて下さい。
③一度退社の意思を示したことで、会社から「いつ辞めるかわからない人」と見なされ昇進できなくなる
あなたとしては「そこまで引き留めるのであれば会社に残ってもいいですよ。もちろんその分しっかり評価してくれますよね!」という気持ちだったとしても、残念ながら会社側からは「この人は以前退職したいと言っていたから、いつ会社を辞めるかわからない忠誠心のない社員」として認識されてしまうものです。引き留めたのが会社側であったにも関わらず、なんとも皮肉ですね。
上司の立場としては「この部下はまたいつ転職するかわからないし、昇進させてしまって良いのか?」と考えるのです。昇進した矢先に転職されたら、昇進させた上司が「部下を見る目がない人」として社内で評価されてしまう可能性があるので、上司もそういったリスクを避けたいのです。
また、しばしば他社で内定をもらいその条件を元に、現職で給与交渉をする人がいます。具体的な交渉材料があるので一見スマートな戦略に見えますが、実際はそうともいえません。なぜなら例えて言うと、恋人に「他の人とデートしたらその人の方が条件が良かったんだけど、それでも私と付き合いたいのならこういう条件を飲んでくれますか?」と言われることと状況が少し似ているのかも知れません。上司も人間なのでこういった駆け引きをされた時点で値踏みされたと感じ、信頼関係が崩れやすいということです。つまりは給与交渉に他社での内定を材料に使わないことです。
退社する気がないのなら、他社で内定を受けたことや退社の可能性を伝えるのは、職場でのトラブルの元になるので避けた方が無難です。
④引き留めていた上司が会社をやめてしまう
冗談みたいな話ですが、実際にあったケースです。他社で内定オファーを受けたにもかかわらず、上司からの引き留めにより現職に留まることにしたAさん。これからも一緒に仕事をしていこうと話していた矢先、その上司がなんと転職してしました。怒ったAさんは、内定を辞退した会社にもう一度連絡をしましたが、すでに時遅し。既に他の人の採用が決まっており、Aさんは現職に留まるしかありませんでした。上司がAさんを引き留めていたのは、単に自分が会社を辞めやすくするためだったのです。
これは極端なケースですが、実際上司がいつまで現職に就いているのかは、あなたが知る由はありません。
⑤会社が買収されるなどで職場環境が変化
現在の会社の環境が良かったとしても、その環境がいつまでも変わらないとは限りません。会社の買収、経営方針の変更、上司が変わるなど、何らかの理由で職場環境が変わる可能性はあります。どんな事情で転職せざるを得ない状況が来るとも、未来は誰にもわかりません。
⑥一旦内定を断った会社には応募できない
もし何か現職の状況が変わった時、一度内定を辞退した会社に応募しても内定をもらえることは、ほぼありません。内定の辞退で「うちの会社には魅力を感じてない」と判断されるからです。ご自身がその企業には2度と応募する気が全く無いのなら問題ありませんが、そうでないのならよく考えて後悔のない決断をしましょう。
以上、退職しない場合のリスクもそれなりにあるということをご理解頂けたでしょうか。
もちろん、退職を撤回しても上手くいくケースもありますが、退職撤回をした人の9割は1年以内に転職しているのが実情です。退職を会社に伝える際には、覚悟を決めましょう。
STEP5
<最終手段>
退職受理されない時の対処法
以上を踏まえても、どうしても会社が退職を受理しない場合はどうすれば良いのでしょうか。こちらは最終手段です。
①退職届を内容証明郵便で会社に郵送する
②退職代行を利用する
③再度、退職届を提出
①退職届を内容証明郵便で会社に郵送する
法律上、民法第627条第1項では「当事者が雇用の期間を定めなかった時、各当事者はいつでも解約の申入れをすることができる。この場合、雇用は、解約の申入れの日から2週間を経過することによって終了する。」とあります。つまり正社員は退職届を提出してから二週間後に退職すれば法律上は問題はありません。(ただし契約社員は該当せず)もし退職届を提出しても受理されない場合、配達証明付きの内容証明郵便で退職届を送る方法があります。社長宛に退職届を送ればOKです。これで退職届が会社に届いたことが公的に記録されるので法律上有効となり、会社が退職届を受け取った、受け取ってないというトラブルを避けることができます。
②退職代行を利用する。
退職によって様々なトラブルが予測される場合や、面倒なので丸投げしたい方は、退職代行を利用するのも一つの手段です。一般のサービスであれば1万〜5万円位、また退職に伴いトラブルがあるのであれば弁護士運営の退職代行サービスもあります。この場合は5〜20万円程ですが、法律に沿った方法でトラブル処理をしてくれるので安心して任せることができるでしょう。
③再度、退職届を提出
上司に退職届を再度提出し、退職拒否なら労働基準監督署へ申告すると伝え、会話も録音します。
上司もかなりビビるはずなので、これで退職することができないことはおそらくまずほとんどないでしょう。
これらの方法はどうしても退職できない場合の最終手段です。社員側から一方的に退職した場合には、会社との関係性を円満に保つことは困難です。在職中の上司などとの関係性が損なわれるおそれもあるので、退職する際には十分ご留意ください。
以上、長くなりました退職トラブルを避ける方法と引き留めなどへの対処法を説明させていただきました。この記事の情報はあなたの役に立ったでしょうか?最後まで読んでいただきありがとうございました。
退職がうまく進みあなたの人生がより素敵なものになりますよう、応援しております。
GOOD LUCK!